「くっ…うぅ…っ」
苦しい 痛い 悲しい
胸が 心が渇く…
「く…っ、グ…グゥ‥アア‥ッ!」
渇ク 渇イテ
…血ガ欲シイ――
「……っ!? 敦盛くん…っ!!」
「……ン‥グ‥!!?」
【 欲 求 】
「敦盛くん‥!どうしたの!?大丈夫ッ!!?」
「……ウ‥ア‥」
声ガ…聞コエル‥?
「い、いけない…っ!穢れのせいで、陰の気が暴走してる…」
コレハ…コノ… 声ハ……?
「く…っ!強い陰気で近付けない‥か‥。
それなら……っ
朝夕に 神の御前に禊して
皇が御世に 仕え奉らん‥・」
光が弾けて 激しく音を立てる。
緊迫した低い呟きと共に紡がれた呪が
陰の気の障壁を打ち破る。
「ひふみ よいむなや‥・・・・」
「ッ‥グ…アア‥ …あ…っ‥!!」
一瞬の隙をついてさらに紡がれた呪が敦盛の身体を
白く包んで縛り上げ、音をたてて静かに崩れ落ちた…。
「…っあ…!? あ……っぁ‥」
「…はっ、は…ぁ……うん…どうやら
間に合ったみたいだね〜‥」
声が聞こえる。
優しい声が――
「……っ‥は……か‥景時‥殿…」
「よかった…気がついたんだね、敦盛くん…」
私を見て、にこり、と微笑みかける
その姿に一瞬、目を奪われた。
「あ……」
「もう…大丈夫? どこか、痛いところとかないかな??」
「ああ。す、すまない…
貴方が…助けてくれたのか‥?」
「え…?いや‥助けたっていうか‥」
尋ねれば、彼は困ったように苦笑して頬をかき小さく呟いた。
「少しでも、助けになってればいいけど…。
あ、ほら、オレってどちらかといえば出来損ないな陰陽師だからさ‥」
「え……?」
「ホントに痛いところとか、苦しいところとか……ない?」
こちらに向けられた翡翠の瞳が心配そうに揺れて私を捉える。
不安げなその瞳の奥。
悲しみの色が見て取れるのがわかって…
私は思わず、彼の手をとっていた。
「大丈夫だ‥本当に、どこも悪くない。」
「あ、敦盛…くん?」
「貴方が来てくれなければ、どうなっていたかは知れないが…。
本当にありがとう、…景時殿。」
「………」
笑顔で礼を言えば、泣き出しそうに細められる瞳。
月光の元その淡い微笑みに
私はまたも、目を奪われていた。
*
穢れたこの身。
けれどあの人は…それを責めなかった。
それどころか…自分も同じだと
そう言って苦笑した。
貴方ほど、綺麗な人は、他にいないというのに。
「……景時‥殿‥」
こんな私を、何度も苦しみから救ってくれた。
仲間だと言ってくれた。
笑顔を向けてくれた。
私の拙い笛の音色にも、少し大袈裟なくらいに
感嘆の声をあげて喜んだ。
貴方は優しくて
とてもあたたかくて‥。
「景時殿…私は‥」
救いたい…と思った。
時折見せる、儚くて悲しい瞳。
泣き出しそうに笑う、その笑顔。
少しでも貴方の力になれるのなら…。
「私は………貴方のことが、好きなんだ…」
呟いたその声が、澄んだ夜の空気に溶けて消えた。
声に出して初めて気付く…熱い想い。
許されぬものだと知りながら…。
なのに、どうしてこんなにあたたかい‥?
「景時殿………梶原‥景時…殿‥」
貴方の名前を口に出すだけで
ふわりと胸があたたかくなる。
世界が色づく。
「私は……」
――っ!!?
ビクリと背筋に悪寒が走る。
いつもの発作か…と眉を潜めれば
同時に襲ってくる激しい痛み。
「…くっ‥あ‥!」
己の腕を強く掴んで、衝動を必死に抑え込む。
欲しい。
血が欲しい。
欲シイ……
「か…景時‥殿‥‥」
ダメだ。
ダメだ。
ダメだ……自ら抑えこまなければ…!
「ぐ…、ううっ‥ウ…」
悲しみに、渇きに、視界が霞んで覆われる。
ぐらり、揺れた身体に膝を折ってうずくまり、
強く地面へと爪をたてた。
「……っ!?敦盛くん!!」
「か…、っ…!?」
かけられた声に顔を上げれば、
駆け寄ってくるのは夜闇に差した優しい光。
「敦盛くんっ!しっかり!…陰の気に飲み込まれちゃダメだよッ!?」
「か……景時‥殿…ッ!」
「…待ってて…今、なんとかするからッ!」
景時殿がいつものように低く呪を唱えれば
とたんに身体が白い光に包まれる。
ああ…優しい‥
あたたかな光だ。
渇きが潤い、 心が安らいでいく感覚。
「あ………」
「はっ‥、敦盛くん?」
少々、息を切らした景時殿が心配気にこちらを覗き込む。
「う…あ‥っ、景時……殿‥」
あたたかい。
柔らかい…優しい光。
私は……貴方が…
「あっ……―ッ!?」
「うわっ!? ……あっ、敦盛く…ッ!!?」
……欲シイ。
衝動のままに、景時殿の襟元を掴み
持ち上げて壁へとたたき付ければ、
彼は低く呻いてずるずるとその場に座り込む。
「う…っ!!…あ…‥」
「……景時殿‥」
「……ぐっ、ごほ‥ッ、あ‥敦盛く……――!?」
ごほごほと軽く噎せて顔を上げ、赤く染まった私の目を見留めると、
彼は衝撃により潤んだ大きな瞳を見開いた。
「あ………めっ、目の色‥が!」
「欲しい……足りないんだ‥」
「足り…ない?…あ‥あつ、―んぐッ!!?」
私への怯えからか震える唇で紡がれた言葉を
飲み込むようにして口付ける。
「ん…っ、ふ…うッ‥」
酸素を求め開きかけた唇を舌で割り
逃げようとするそれを上手く捕まえ絡ませる。
甘い吐息を飲み込み、歯列をなぞって水音をたて充分に堪能すれば、
どちらのものかわからぬ銀糸が艶やかに二人の間を繋いだ。
「…っは…はぁ‥!あ、敦盛く…やめ…て…ッ!!」
「欲しい…足りないんだ…もっと…貴方が欲しい。」
「あっ…や…ッ!そ、そこは……っ!!」
袴の上から軽くそれを握れば、ビクビクと反応する過敏な身体。
「あっ…ああ―っ! 駄目…駄目…だか……っ…あんッ!!」
晒された鎖骨を甘く噛んで
袴の上から握りこんだそれを強く扱き上げる。
頬を上気させて甘く啼く彼の恥態に煽られ、
さらに気持ちが高ぶりニヤリと唇に笑みが宿る。
「こんなに硬くしておいて……今更、駄目だなんて言えるのか?
嫌なら、それなりに抵抗すればいい…」
「……ッ!? あっ、…ひぁあッ!!」
呪で消耗した体力のまま快感を引き出され
常とは違う強い力で押さえ込まれては、
抵抗など出来るはずがない。
わかっていながら………私は甘い言葉を紡ぐ。
行為を進める。
すべては…
「欲しい」という、欲求のために――
「足りない…力が足りないんだ……あたたかい…光が‥」
「ちか‥ら…ッ? あ、……んん‥うッ!!」
唇を塞ぎ、舌を絡ませ袴を素早く剥ぎ取って、
そそり立つそれに直接指を絡ませる。
「……ふッ!!…ぐ‥っ」
くぐもった吐息が甘く脳を震わせ、甘美な雫となって渇きを潤す。
裏筋や先端を先走りの液を絡ませ刺激すれば、
それはますます量を増しとろり、とろりと伝い落ちた。
「は‥すごいな……もうこんなにたくさん溢れさせて‥」
「……っ‥あ!?」
たくさんのそれを、零さないように。
すべて己へと取り込めるように、昂ぶりを唇に含んで吸い上げる。
「ああ…っそん、な!だ、だめだよ…っ!…んん――ッ!!」
指は、ヒクヒクと収縮する蕾へ厭らしく這わせたり
下にある膨らみを優しく揉みしだく。
「貴方のものは…おいしいな‥。あたたかくて強い力がある‥」
「ちか…ら……、はっ!? まさか…これはっ!!」
「もっと‥欲しい…」
「あっ‥あああ――ッ!!」
無理矢理に蕾へ指を二本突き入れて掻き回す。
苦痛からか快感からか…一筋、雫が白い彼の頬を伝った。
「あ…ッ、く‥っ」
「ああ…貴方は、中まであたたかい‥」
「ひ…、ぐ‥っ、そ‥そんな、にしたら…、あああっ!」
生暖かくヒクヒクとした感覚と潤んだ瞳に駆り立てられ、ぐっ、と膝を抱えて…
あまり慣らしてもいない入口へ自分のそそり立つモノを
半ば押し込むようにして突き入れた。
「ひあ…っ!アッ! い…いた‥!! 痛い‥よぉっ!」
「欲しい…!貴方がッ!! 貴方が欲しいんだッ!!」
制止の声も聞かず、激しく腰を振り続ける。
抵抗は…もはやない。
いや……
「ああっ…ひぁあッ! あ…敦盛‥く…っ」
「景時殿…!! 景時、ど‥、―ッ!!」
「あ…っ!あ………」
瞳に涙を溜めながら、それでも彼は淡く笑う。
強く、私を抱き寄せる。
「あ…、好きだ‥! 好きなんだ‥景時殿!!」
「あ、あ‥ッ!! 敦盛く…っ………あつ、熱い‥ッ!!」
「ぐう――っ!!」
内壁が急激に窄まって彼は身体をビクビクと震わせ、
白濁の液を二人の間へ撒き散らしながら、強く私を締め付けて果てる。
逆らわず、低く呻いてその胎内へと大量に欲を吐き出し、
私はまたも彼を求めて。
自らの欲が‥
渇きがおさまるまで
私は、彼を求め続けた――
*
「ん……」
不意に風が頬を撫で、
朝方の冷たい空気に軽く身震いして重い瞳を開く。
……ここは‥?
情況を確認しようと辺りを見回せば
見慣れた顔がすぐに目に入ってきた。
「あ………か‥景時ど……」
―――ッ!!?
声をかけようと唇を動かしかけて、
私は驚愕に目を見開いた。
「あ…こ、これ‥は‥」
無惨にも無理矢理に剥ぎ取られたボロボロの衣服。
それがどんなに激しく酷い行為だったかを知らせるかのように
互いの身体へとこびりついた血液と‥大量の精液。
傷が熱を持っているのか、それとも体力の問題か…
くたりと横たわる愛しい人の頬は熱で赤く染まり、
眠っているのにも拘わらず、唇からは絶えず苦しげな吐息が漏れる。
「景時殿…っ! 起きてくれ!景時殿ッ!!」
「……ん‥っ」
必死になってゆさゆさと身体を揺すれば、
ピクリ‥長い睫毛が震え焦点の合わない
翡翠の瞳がゆっくりとこちらを捉える。
「あ……」
「景時殿‥っ!!」
「…あつもり‥くん?」
私を見留め、掠れた声が名を紡ぐ。
――貴方をきっと守ろうと誓ったのに、私は何をした……?
弱々しいその姿にズキズキと心は痛み、
申し訳なくて、悲しくて悔しくて、
ただただ罪悪感でいっぱいになって
唇を噛み締める。
「す‥すまない‥っ!! 私は貴方になんということを……ッ」
「‥敦盛くん……」
「……っ!!?」
この手に触れた、温かなぬくもりに。
変わらぬ優しい声に。
目を見開いて驚き、彼を見上げた。
「か‥景時‥殿…?」
「大丈夫…だから。 泣かないで…?」
「……っ!」
「泣か…ないで…? 敦盛くん‥」
「あ‥、あ……」
優しく触れてくるその温もりに、ただただ……涙が溢れた。
泣かなければ…ならないのは、
本当に泣きたいのは、貴方の方だろう…?
なのに、どうして貴方は私を責めない…?
そんなに柔らかな笑顔で、私を……
「か、景時‥殿…すまない…ッ! …すまない‥私は…!!」
「敦盛くん、大丈夫…。オレなら…平気だから‥」
「でも……っ」
「陰の気が暴走して‥霊力を、求めたんだ…
オレは…霊力が高い方だったから…。
だから君はきっと力を求め‥て…」
大丈夫、
君のせいじゃない。
と、ボロボロに乱れた羽織を引き寄せて、淡く微笑む…優しい人。
「それに……オレはこれくらいじゃ‥壊れたりしないから…」
「……っ!」
「平気、だよ…? ちゃんと…慣れてる‥から…」
ほら、
穢れてるのはオレの方だって‥前に言ったでしょ?
そんなことを言って。
泣き出しそうに
貴方は笑った。
痛々しいその仕草に、鼻の奥がつん、と痛んで
またも涙が溢れ出す。
「……っ!」
「あ…敦盛‥くん?」
そして、壊れそうなその身体を…強く、強く抱きしめた。
「…う…っ‥っふ‥」
「敦盛くん……泣かないで?」
「か、景時‥殿‥っ」
「敦盛くんは、優しいね……」
温かな手が背を撫でる。
堪らなくなり、私は縋り付くようにして
ただただ貴方の身体を掻き抱いた。
「景時殿…! すま‥ない…ッ!!」
「……あつ‥」
「私が必ず…貴方を守るから!!」
「……っ」
息を飲む気配がする。
ふるり…と小さく身体が震える。
それは…恐怖だろうか?
やはり大丈夫だとは言っていても、
私はあんな行為をしてしまったのだから。
でも………
「好きだ……貴方が好きなんだ、景時殿…」
だから、貴方を守りたい。
貴方を襲う、すべての悲しみや苦しみから…貴方を救いたい。
私がいつも、貴方に救われてきたように…。
貴方が私のことをどう思おうと、
それは許されない願いだとしても、
このあたたかな気持ちだけはきっと
私の真実だから――
「好きなんだ……どんなものからも、きっと私が貴方を守っていく…」
「………」
「貴方がどう思おうともそれは変わらない。私はずっと貴方の味方でいる。
貴方を……景時殿をいつか命が消えるその日まで守り続けていくと誓う。」
「……」
「………すまない。
私のような者が貴方に触れるなど。今……
………っ!!?」
無言を拒否と取った私は、ぬくもりから身体を離そうと力を込める。
だが、離れていくはずだったその身は、
彼の腕によって、もう一度そこへと引き寄せられていた。
「……っ」
「…か、景時殿!?」
ぎゅ…っと、縋り付くように両腕で抱きしめられ、鼓動が高鳴る。
身動きの取れぬまま、必死に動揺を抑え、
冷静さを取り戻していると、あることに気がついた。
「……景時殿?」
「……っ、…う…っ‥」
肩が小刻みに震えている…
微かに鳴咽を漏らすその身体を、少しだけ迷って
今度は自らの腕でそっと優しく抱き寄せた。
「……景時殿…」
「い、一緒に、いて、くれる…?」
「ああ……」
しゃくり上げるその声。
「本当は…いや、なんだ…。 一人になる、のも、…だから……」
初めて聞いた彼の弱音。
そのすべてが愛しくて…
「……私は貴方の傍にいる。
どんなものからも守ると誓うから、私を貴方の傍に置いて欲しい…」
言葉に、目尻を赤く染めた、揺れる翡翠の色が私を見つめる。
伸ばされたその温かい手に頬を擦り寄せれば、
どちらともなく引き寄せられるように甘い唇が重なった。
「敦盛くん……」
「景時殿………」
「……大好き…」
「……っ?!」
囁かれたその言葉。
胸に抱いた その優しいぬくもりに
今―― 私の心と身体は
甘い幸福で満たされた。
-fin-
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え?・・何故にこのCPかって???(きいてない。)
それは、敦景をリクエストした・・・・私の従姉妹に訊いて下さいね?(笑)
こ、これから、こんなのがまた沢山増えていく予定ですので、どうぞよろしくお願い致します。m(_ _;)m←
おっしゃ!念願の裏が開通したので、いままでお蔵入りにしてきた
裏小説を、ちまちま更新していくぞーっ!(おーっ☆/や め て く れ!!!;;)
景時受け・・・まだまだ、沢山書きたいなぁ・・・・(爆;)