ひらり。





   ひらひら。








   ひらり。






   雪が舞う。




冷たいこの空気は・・・



 この冬空は、どこも変わらないのに。











       【雪の空】









さくさくと音がする。 



真っ白な雪に足跡をつけて、

ただ、ひたすら歩く・・・。


町行く人は皆、肩を窄めて歩くけれど・・・

寒さなんてもう、気にもならない。




「・・・あっ・・・!
 ごっ、ごめんなさい・・。」



誰かに肩がぶつかったらしく、急いで謝る・・。


冷たい目をしたその人は

振り向きもせず、歩いていってしまった。



「・・・早く、行かなきゃ・・。」


黙って何かを考えていると、涙があふれそうだから。

何も考えず、早足で学校へと急ぐ・・。












・・帰りの駅のホームで会った人。





交差点ですれ違った人。



やっぱり・・違う。







・・あの人も、あの人も、









・・みんな、違う・・・。










「・・さ・・む・・。」


ふるっ、と体を震わせて・・

手に息を吹きかけ、温める・・。



ああ・・こんな時、

あの人はさりげなく手を握ってくれたっけ・・。

 


 『うわぁ・・寒い〜っ。
  
  ・・ね、ちょっとだけだからさ・・温めて?』







・・などと言いながら・・、


その手はとても温かかったこと・・

今も、はっきり覚えてる・・。







「・・・・・・。」








・・この涙は、寒さのせいなのだと・・

自分に言いきかせ、ひたすら歩く・・・。










   ひらり。






   ひらひら。







   ひらり。







冬の空から、雪が舞う。






ああ、確か・・

あの人と初めて会った日も、真っ白な雪が降っていた。





・・・あの人と離れたその日にも・・・。










   ひらり。







   ひらひら。







   ひらり。








雪は静かに舞っていた。








この冷たい空気は・・、



この冬空は・・・、




・・・どこも、変わらないのに・・・。







・・ああ、どうして・・・・。









「・・・約束した・・のに・・っ・・。」


何度ここで、涙を流したのだろう。

小さな公園のベンチに座っては、泣いた。





「どうして・・どうして・・いない・・のっ・・。
 ・・・ねぇ・・っ・・。」




嗚咽が混ざったその声は、冬の風にさらわれたのか・・。


問いかけるその声に、答えるものなど誰もいない。







   ひらり。






   ひらひら。










   ひらり。









雪は未だ、静かに舞い落ちる。

















「・・・・あ・・。」







ひたすら泣いた後、

腫れているだろう・・目を擦り、鏡をのぞき込むと・・。


・・ヘアピンが外れていることに気付く。




「・・どこかに・・落としてきちゃったのかな・・。」


一つ、ため息をおとして立ち上がり、歩き出す・・。









   ひらり。









   ひらひら。








   ひらり。





もう、この真っ白な雪も目に映らない。








この世界すべてに意味はない。












・・あの人が、いないのならば・・・。











「・・・・っ・・・。」


何度も、何度も流した涙がまた、

・・・溢れた・・・。












   ひらり。







   ひらひら。














   ・・ふわり・・・。














   ・・温かい・・  光が。










 懐かしい・・、匂いがした・・。















『・・・はい。これ・・・君の・・だよね・・?』






 



 その声は・・夢か、幻か・・。










・・にっこり。微笑んでそっと・・


私の髪に触れ・・ピンを付け直すその人は・・




















「・・・景時、さん・・・。」















 ずっと・・ずっとずっと、求めていた・・





・・・・大好きな人。












「・・・ごめんね。・・本当に・・ごめん・・。」





そっと、頭を撫でてくれる。


その手はどんなものより温かくて・・・。





「・・泣かないで・・。ちゃん。

   ・・・大好きだよ・・?  」



「・・・・・っ・・・!」



その胸に飛び込んで、ぬくもりを確かめた・・・。




・・夢か幻か・・・・、







・・いいや、そうじゃない。







・・ふわり・・、と薫る梅の香。





ぎゅっ、と抱き締めれば

それ以上の力で抱き返してくれる力強い腕・・・。








・・・世界のすべてが、ここにあって・・。















「・・・うーん・・、・・困ったなぁ・・。」


抱き締めて離さない私を見て、

照れくさそうに頬をかき、苦笑する彼。




・・その声さえも、

・・ひどく愛しい・・・。











   ひらり。








   ひらひら。








   ひらり。








雪は、変わらず降り積もる・・。









彼は彼女を庇うように・・後ろから覆い被さり、

小さな彼女の体をすっぽりと包み込んだ。



「・・待たせて・・ごめんね・・?
 辛かった・・よね・・?」


「・・・・・。」


静かに首を振り・・、彼の胸にもたれかかる彼女。

そんな健気な姿に、微笑みかけて・・。







「・・・・・そっか・・。

・・・あのね?俺・・ちゃんと帰ってきたから・・。」




「・・・うん。」






「・・約束、忘れてないから・・・。」



「・・・うん・・。」






「・・・もうずっと・・、離さないから・・・。」


「・・・・う・・ん。」





そこまで話して、彼はぷっ、と吹き出した。




ちゃ〜ん。
さっきから、うん。しか言ってないよ・・?」








「・・・・・・うん・・。」



ああ、ホラまた〜っ!・・と、彼は・・笑う。







・・そんな彼を見て・・彼女も、笑う。








地面を覆う白銀の雪に、


真っ青な空。





ああ、本当の世界はこんな風に・・

・・美しいものだった・・。









「・・・景時さん、・・・・大好き・・。」


「・・えっ、あっ・・・・あはは〜・・。」


「あ・・、・・顔赤いですよ?
 ・・もしかして、照れてます?」


「・・・へ・・!!?」


・・懸命に目を逸らして・・頬を染める彼を見て・・。

彼女は思わずクスリ、と笑みを零す。




「・・・ヒドイよ・・ちゃん・・。」


「・・仕返しですよ?」




「・・・はぁ〜・・。・・それを言われちゃうとね・・。」


「・・・ふふっ・・・。」

ため息をつく彼を後目に、なおも彼女は笑う。









「・・・・本当に、ちゃんにはかなわないなぁ・・。」



そう言いながら微笑んで・・、

彼は目の前にある小さな手をとり、そっと口付けた・・・。








次にはその細い手首を引き寄せ・・、深く唇を重ね合わせる・・。







・・甘く、熱いその口付けに、

二人はしばし酔いしれ・・・




・・瞳を見つめ、微笑み合った・・・。












   ・・ひらり。










   ひらひら。








   ひらり。







手を繋いで歩く二人に、雪が舞い降りていく・・・。





彼がいて、彼女がいて、初めて・・

二人の世界は動き出した・・・。
















・・・・・この冷たい空気は・・、



・・この冬空は・・どこも変わらないのに・・・。












・・・・私の隣にはそう・・、



・・・・彼がいる。











・・だからきっと、季節が・・・巡るの・・。








・・・冷たい冷たい雪の空・・。








それはやがて・・・・暖かな・・











・・・・春になる・・。









                   END













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  ◇アトガキ◇

・・はい; ありがとうございました〜;;

なぜかなぜか・・・景時さんドリームです;;

だっだって好きなんです・・彼が・・;;////(ハイハイ;


十六夜記・・・本当に感動しましたよね・・///

っていうか、この人はなぜか・・いつもいつも泣けるストーリーばかりで・・//

・・・・もっもう・・ホントに・・・・ハンカチ必須ですよ!!!;(号泣/あーあ;)


・・・っとすみません;; 自分の世界にトリップしました;;(汗)

とっとにかく;; このお話で温かい気持ちになってくださる方が

少しでもいることを願います・・・;;;

ちなみにこの小説・・実は最初、携帯で作ってたんですよ;;

そのせいでなにやら文と文の切れ目がおかs・・(殴!)

・・・・あわわ;; 皆様、駄文を失礼いたしましたぁ〜っ;;